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シエスタは自然?
広島大学大学院 総合科学研究科 行動科学講座
教授 堀 忠雄氏「快適睡眠のすすめ」
 日中の眠気は、前の晩に十分に睡眠をとっていてもおこる。たいくつな環境下では、前日の24時間中にふだんの倍の16時間眠っていても、日中に1〜2時間の昼寝がおこる。恒常環境下で、自由に生活させたばあいの睡眠の発現分布を見ると、2つのピークをもっている。
 1つは最低体温期のすこし前でおこり、もう1つは最高体温期のすこし前でおこっている。前者は夜間の主睡眠の時間帯に、後者は昼寝の時間帯にあたる。昼寝は体温リズムと関連し、エネルギー戦略に組みこまれたごく自然な休止相であり、ヒトはもともと昼寝をするようにできていることをしめしている。
 地中海沿岸にシエスタとよぶ昼寝の習慣があることは、よく知られている。東南アジアや南中国、中南米地域でも同じような習慣がある。それらは14〜16時にかけてとられており、眠気のピーク時刻や昼寝の時間帯に一致している。
 昼寝の習慣は熱帯から亜熱帯にかけて分布するため、高温環境にたいする対処行動と考えられてきた。ところが、昼寝の習慣がある地域を地図にプロットしてみると、赤道をはさんで緯度にして南北45度の範囲に分布していることがわかる。
 この範囲には北海道まで含まれるので、日本にはシエスタに相当する昼寝の習慣があってもよさそうだが、少なくとも現代社会にかぎれば、ほとんどないといっていいい。一方、地中海沿岸地方も冬は気温が10度以下になり、1年をつうじてとられるシエスタが、対暑戦略として機能していると考えるのにも無理がある。たまたまこれらの国では昼寝が許容され、そうでない国ではタブー視されたという文化差と考えるほうが妥当だろう。
 とくに北半球高緯度に分布する、先進国とよばれる国々では、昼寝はタブー視され、昼寝の弊害が指摘されてきた。その主なものは…
1.生物リズムが乱れる
2.夜間の主睡眠に悪影響が出る
3.昼寝直後に睡眠慣性が残り、事故や作業成績の低下を招く
 というものである。睡眠慣性とは、眠気の残留、つまり起きてからしばらく頭がボーッとしてはたらかない状態がつづくことをいう。
 シエスタは2時間くらい眠るので、夕食も遅くなり、就床も遅くなりやすい。その結果、夜間睡眠が6時間、昼寝が2時間、あわせて8時間という分割睡眠になることが多い。しかし、これがとくに睡眠障害を生んでいるという指摘も見あたらない。
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